2022/03/05
映画「戸田家の兄妹(1941)」
今日観た映画は「戸田家の兄妹(1941)/The Brothers and Sisters of the Toda Family」(1941年日本映画)と言う、ドラマ、モノクロ映画。小津安次郎監督作品で、キャストは、キャスト(以下、敬称略)は、藤野秀夫(男優) 父 進太郎、葛城文子(女優)母、斎藤達雄(男優)長男 進一郎、佐分利信(男優)二男 昌二郎、吉川満子(女優)長女 千鶴、坪内美子(女優)二女 綾子、高峰三枝子(女優)三女 節子、三宅邦子(女優)進一郎の妻 和子、近衛敏明(男優)綾子の夫 雨宮、桑野通子(女優)時子、河村黎吉(男優)鈴木、飯田蝶子(女優)女中 きよ、葉山正雄(男優)千鶴の子 良吉、岡村文子(女優)うなぎ屋のおかみ、笠智衆(男優)友人、山口勇(男優)友人、坂本武(男優)骨董屋、森川まさみ(女優)谷本夫人、忍節子(女優)その友人、出雲八重子(女優)女中 しげ、その他の皆さん。内容は、戸田家は裕福な家庭で、長男、長女、次男、次女、三女の五人兄妹。母の還暦祝いで家族が集まりますが、その日の内に多額の借金を残したまま父が亡くなってしまいます。家や家財道具を手放す事になり、母と独身の三女が家を出ることになったのです。二人は長男の家に居候する事になりますが、長男の妻と折り合いが悪く、今度は長女の家に世話になる事にしますが、ここも居心地が悪い。結局二人は鵠沼の別荘地で暮らす事になるのですが…。
この映画も良かった!実に良かった!僕は小津監督作品と波長が合うのでしょうか?そしてこの作品は、その後になって発表されるあの不朽の名作「東京物語」に似ています。根底に流れているものは殆ど同じなのではないでしょうか。それにしても、母親が、自分が生んだ子供達、そしてそのお嫁さんからこの映画のように冷たくあしらわれ、厄介者扱いされる事が、どれほど辛く悲しい事なのか、この映画を観ていて痛感しました。切なく悲しいです!僕は思わず、昨年秋に亡くなった自分の母の事を思い出してしまった位です。そして一つの結末として、母親の耐え忍んで来た思いを晴らすかのように、仕事先の天津から父親の一周忌の為に戻って来た佐分利信さん演じる次男の昌二郎が、会食の席で、兄妹やそのお嫁さんに対して不人情を批判して怒りをブチまけるのです!少々勝手な感じがしないでもありませんが(それでも昨日観た小津映画「風の中の牝雛」の雨宮修一よりはましだと思いました)、このシーンは実に痛快で、昌二郎はこの後、母親と三女の節子、そしてお手伝いさんに対して「天津に来て僕と一緒に住みませんか?」とちゃんと声を掛けています。
そして一番最後に昌二郎が、ある事に対して、あまりの恥ずかしさの余りに鵠沼の近くの海岸に逃げ出すところは、可愛らしくて面白いです!こんなギャップも素晴らしいと思います。他にも小津監督は、その場面の臨場感をより強く印象付ける為に音効を用いますが、この映画では葬儀のシーンで、木魚の「ポンポンポンポン」と鳴る音を流します。昨日観た「風の中の牝雛」では、貧しい主人公が住んでいる近くにある工場の機械が動く音でした。それから1941年と言うと、あの太平洋戦争が勃発する年の作品になります。となると、この家族は、この後太平洋戦争に巻き込まれて行く事になったのでは?家族の崩壊を描いた映画。俳優陣も実に豪華で、その辺も見応えがあります!
小津安二郎が池田忠雄と共に書いたシナリオを監督したドラマ。小津が「東京物語」に先駆けて家族の崩壊を描いた。豪華なキャストも功を奏して、公開時には大ヒットを記録。ストーリーはアメリカ映画「オーバー・ゼ・ヒル」の翻案とされています。古い映画なので音声が聴き取りにくい箇所があるのが、唯一残念!音楽は、伊藤宣二。おススメの映画です!